「おにいちゃんのハナビ」4

或る意味、この映画の一番の話題というのが、
谷村美月が剃髪したという事。

事前にそういう知識を仕入れずに映画を見たので、自分はけっこうびっくりした。


同時期に公開された映画「十三人の刺客」では、おはぐろに、眉毛そり落としという、アイドル路線へは二度と色目を使わないとでも言うような役を演た(チョイ役にすぎんのに、なんでそこまで)。

どうも谷村美月は、自分のルックスに対して自虐的に振舞いたい衝動みたいなものがあるのだろうかと思ったりもするのだが、

十三人の刺客」はどうでもいいとして、
おにいちゃんのハナビ」の方の剃髪は、どうしても必要な事だと、自分は思う。

谷村美月は、事務所に頼み込んで頭を剃らして貰ったらしい。
そこまでして頭剃りたかったのだな。

彼女が、頭を剃る事が絶対この映画には必要だと感じていたようで、自分もそう思う。

映画の中では、谷村美月の演じる須藤華は、ほとんど弱音をはかない。吐いたとしても、傍に分るようには吐かない。

だから、もし、谷村美月が頭を剃っていなかったとしたら、
須藤華が抱え込んでいる絶望の形が、一切観客には伝わらないのです。
彼女が何にもなかったようにさばさばと生きている裏側には、つるつるの坊主頭に象徴されるような死がデンと居座っているわけであり、
彼女が何にも言わなくても、いや、むしろなんにもいわないことにより、一層、その悲しさが見る側に伝わるのですね。

映画の中では、髪の毛がないことを彼女は嘆いたりは全くしないのですが、
普通に考えりゃ、自分が禿げでカツラ被らなきゃならないって事は17くらいの女の子には辛いことに決まっています。
でも、それに対して全く落ち込んでいない振りを続ける事の、或る意味の不自然さというのが、
死をまるで恐れないという彼女の不自然さとピタリと一致しているのですね。

禿げているというのは、
傍から見たら痛々しい事なんですが(実際他の登場人物はその事に気を使っているのですが)、それを跳ね返す彼女の強さの中に、彼女の死に立ち向かう強さを感じるのですね。

禿げに耐えているんだから、
もう死ぬ事さえ恐れなくても不思議ないだろう。そんな風に見ている側は説得されます。


谷村美月は、髪の毛剃った後、鏡を見て、なんとなく泣けてきた自分に対し、普通の女の子みたいな感じ方するんだと思うと、何かうれしくなった、
と、けっこう変な事言っています。


変な役、奇怪な役の多い谷村美月ですが、
おにいちゃんのハナビ」は、珍しく萌系といってもいいようなかわいらしい役です。

しかし、ところどころで、ブスっぽい映り方していたりもします。全体的に可愛い役なのであんまり気になりませんが、一部分だけ取り出すと、かなり変顔してたりするんですよね。

セーラー服着ていると、変顔してもあんまり気にならない。逆に、セーラー服着てなかったら不細工に見えるんだろうな。


秋の場面で白血病患者に見えるように痩せたのに、冬の場面、つまり臨終に近い場面でリバウンドしており、その点に関してはちぐはぐ。

病気メイクで尚且つあご周りに肉がついている時、谷村美月、かなり不細工で残念な画面映り。