ブリティッシュ・フィルム・インスティチュート(BFI)選出の100本のイギリス映画の内、ランキング10位の名作。
そのトップ20を見ると、古典的名作ばかりなのですが、ぽつんとこれ一本だけ現代劇があるといった趣。
とはいえ、この映画もすでに二十年も前の映画となりました。
当時は、おしゃれな色彩、おしゃれな音楽、しゃれたユーモアと台詞という感じでもてはやされたのですが、
今見ると、かなり陰惨な更生しきれないジャンキーの物語です。
映画の時間配分をこのようにするのが、現代映画の黄金律なのですが、
『トレイン・スポッティング』では、ちょうどど真ん中の分水嶺のところで、ルー・リードの『パーフェクト・デイ』のシーンとなります。
ドラック依存症としてずるずるとダメ人間としての生活を送る主人公が、本気でまっとうな社会人になろうとする契機となった薬物過剰摂取時のBGMですけれど、
では、その歌詞はどうなっているのかというと、
今回はこちらの先生のブログから頂戴いたしました。
積ん読!: [歌詞] Perfect Day (Lou Reed)
Just a perfect day Drink sangria in the park And then later, when it gets dark We go home Just a perfect day Feed animals in the zoo Then later a movie, too And then home Oh, it’s such a perfect day I’m glad I spent it with you Oh, such a perfect day You just keep me hanging on You just keep me hanging on Just a perfect day Problems all left alone Weekenders on our own It’s such fun Just a perfect day You made me forget myself I thought I was someone else Someone good Oh, it’s such a perfect day I’m glad I spent it with you Oh, such a perfect day You just keep me hanging on You just keep me hanging on You’re going to reap just what you sow You’re going to reap just what you sow You’re going to reap just what you sow You’re going to reap just what you sow |
完璧な1日 公園でサングリアを飲んで そのあと暗くなって 二人で家に帰る 完璧な1日 動物園で餌をやり それから映画を見て 家に帰る ああ、そんな完璧な日を 君と過ごせて嬉しい 完璧な1日 君のおかげでやっていける 完璧な1日 問題は全部忘れて 二人で週末の旅行 なんて楽しいんだろう 完璧な1日 君は俺自身を忘れさせてくれた 俺がもっとましな 別の誰かだったらよかった ああ、そんな完璧な日を 君と過ごせて嬉しい 完璧な1日 君のおかげでやっていける 君はこの報いをうけるよ |
詞だけ読んでいると、土日をすごす恋人の様子なのですが、
『トレイン・スポッティング』の映像に合わせて聞きますと、
麻薬中毒者のことをうたっているようにしか聞こえなくなってしまいます。
というか、この映画でのこの歌の解釈ってそういうものですし、
おそらく、この映画の曲に対する解釈は正しいのだろうという気がします。
病院で赤い担架に乗せられたまま救命措置として何かの注射を打たれ、主人公は現実に戻るのですが、
この救命措置の時間尺にぴったりと合わせて、歌詞の最後の行
「You're going to reap just what you sow」が繰り返されます。
直訳すると、「まいた種は、刈り取ることになるよ」となりますので、
多少意訳すれば、因果応報。
この場合の
歌詞の最後の行「You're going to reap just what you sow」のyouは誰なのかというと、歌の主人公であり、
自分の人生がだめになるのはわかっているのにそれを他人事のように感じてしまって、何も対処ができない、
そういうことでしょうか。
プレッシャーやストレスからドラッグに逃げようとしたら、自分の命を危険にさらし周囲の人も傷つけるという形で責任を取らされる、
このように映像が、歌詞を解釈しているのですが、
ついでにほかの箇所もチェックしますと、
「完璧な一日、動物園で動物にエサをやり、…」
もはや人間以下の様態の主人公の体をタクシーに乗せるために、階段を引きずって下すところ。
動物にエサをやるって、自分のドラッグへの欲望をコントロールできないままに一発決めてしまうことの比喩なのだろうか?と感じさせられてしまいます。
「それから映画を見て、…」
ドラッグの妄想・幻想のことを映画と言ってるのでしょうか
「家に帰る」
いつもの薄汚い酩酊状態のこと?
そして、最後のリフレイン以外の「君」のことを「ヘロイン」と語変換すると、
癒されがたい孤独な週末のドラッグ体験をうたっているにすぎないように感じられます。
「ああ、そんな完璧な日をヘロインと過ごせて嬉しい
完璧な1日、ヘロインのおかげでやっていける」
こう解釈することで、ありふれた恋人たちの光景を歌うには痛々しすぎるルー・リードの歌声が何を意味していたのかがよく理解できるような気がします。
しかし、この映像と抱き合わせで見ると、上のような解釈しかありえないのですが、
歌詞だけですとヘロインの歌だと確定する根拠って別にないのですから、
ごり押しして、無理やり、週末の恋人たちのささやかな幸せの歌に修正しようとすれば、出来ないことはないのですね。
そうすると、最後のリフレインの意味は、
「あなたがまく愛の種は、実をつけるよ」
そんなとこでしょうか。