日本に於いてハロウィーンをはやらせようという試みは、もう10年以上前からなされているはずですが、ここ2,3年はようやくハロウィーン人気も本物になってきたような感があります。
「ドラキュラのコスプレってなんかいいんじゃね」と思ってる人が大勢いるらしいのですが、その理由の一つは、
黒スーツにオールバックが主で、コスプレの敷居が低いこと。
「あっ、恥ずかしい…」と思えば、マントと付け牙外して素知らぬ顔できるってのもあります。
それに、オーストリア貴族を基にしたスタイリッシュないでたちにほのかな憧れを感じる男がいるのも想像に難くないところ。
また、処女の生き血を吸って生きるという設定がうらやましいというのもあるかもしれません。
日頃の雑事は奴隷の執事に任せて、自分は朝寝に昼寝。そして夜になると処女を求めて徘徊。
「おれ、ドラキュラの生活10年くらい試してみたいわ」と思う人も大勢いるでしょう。
映画の『魔人ドラキュラ』ですが、
Dracula (1931) Trailer - YouTube
この映画、ブラム・ストーカーの1897年の小説をかなり忠実に映画化したものです。
この映画がいかに成功した作品であるかは、これ以降の吸血鬼のイメージが主演俳優ベラ・ルゴシで固定されてしまったことからも分かります。
が、
吸血鬼という概念、そのイメージはブラム・ストーカーが小説を書く前から世界中に存在しましたし、
吸血鬼を題材とした文学作品もいくつか存在しました。
ブラム・ストーカーは、そういう先行作品や世界に伝わる伝承を図書館にこもって調べたそうで、ドラキュラの弱点等の設定は彼本人の創作ではないそうです。
さらに重要なことは、小説『魔人ドラキュラ』の発表された当時のイギリスは、
「吸血鬼?今どきそんなあほなもん信じる奴いるかよ」って時代になっていたそうで、
科学特に医学の分野の発展から、処女の生き血を吸って永遠に生きるという設定のアホらしさは皆の認めるところだったそうです。
そしてそれゆえに、
「科学の進歩した19世紀末にもなって誰も真に受けることのできない吸血鬼が、なんで何のためにロンドンの町に現れるか?」ということを真面目に説明して読者を納得させようとしたのが『魔人ドラキュラ』であり、その後あまたと続くドラキュラ作品の原点からしてパロディ要素の濃厚な作品であるということができるでしょう。