映画後半の午後一時半の朝食のシーン。
「お前が彼氏だと思っているポン引きは人間のクズ」
「金の面倒は俺が見る」
「お前は実家に帰れ」
うざいなと思っていた少女も、だんだん彼の熱さと、奇妙な愛嬌に心が揺らぎます。
「こんな人生、もう嫌、かもしれない」
「何言ってるんだよ。お前がいてくれて俺がどんなに幸せかさっきも神様にありがとうって…」
ハーヴェイ・カイテルのポエム調の台詞に心とろかされて、なし崩し的になってしまうジョディ・フォスター。
そして、それに続くカットが、デニーロの射撃練習。
広義でのモンタージュなんですが、この射撃練習の想定ターゲットは、もちろんさっきのシーンのハーベイ・カイテル。
しかし、マグナム44なんか使ったら、睦まじくもつれ合う二人のうちハーヴェイカイテルの方だけを狙い撃ちにするなんて無理でしょう?
この最後の討入りのシーンの撮影にあたり、当時13歳のジョディ・フォスターにこの撮影を現実の出来事と取り違えてトラウマ化しないための配慮から、
どんな風に人が吹っ飛んで、どんなふうに血が流れて、云々の現場の仕込み過程をすべて見学させたそうです。
その甲斐もあってか、もしくはそんな配慮の必要なタマではなかったのかもしれませんが、
彼女の感想は、「いい勉強になった、面白かった」だそうです。
やらせの撮影でさえそれだけの配慮がされるのですから、もしこれが現実だったと想定すると、その後のアイリスの人生に大きなくらい影を落としていることになるはずで、
高嶺の花のベッツィーをポルノ映画に連れていって激怒させた以上に、
アイリスの方にはひどいことしたわけです、トラヴィスは。