村上春樹は『羊をめぐる冒険』を書く際に、『シャイニング』を参考にしているらしく、
北海道のホテルに幽霊がいるという設定、
さらには、
友人の山奥の別荘に行くと、冬ごもりの支度はしてあるのに彼はいなくて、
主人公が食糧倉庫をチェックするシーンでは、一冬分の食糧備蓄が延々と羅列されるのですが、
それと似たような描写が、『シャイニング』にもありました。
これがなかなかに食欲をそそる。
それで、『シャイニング』の続編なのですが、小説は発表されていまして、
DOCTOR SLEEP by Stephen King - YouTube(これ、本の宣伝ビデオですか)
日本語の翻訳はまだ発売されていませんが。
かつての超能力少年が、大人になって、
かつての父親と同じくアルコール中毒の道をたどります。
そして、いろいろな場所で酒がらみの問題をひきおこし、一つの街になじめず各地を転々とするのですが、
たまたま偶然、とある街で断酒会に参加して、酒を断つことに成功し、
自分の超能力を活かしてホスピスのカウンセラーとしてそれなりの評判を得るのですが、
隣町に、たまたま自分以上の超能力を持った少女がいて、
その少女と一緒に、全米各地をジブシーのようにさすらう吸血鬼集団との抗争が、云々…(おい、その展開でいいのか?)
小説の前半部は、主人公のアル中の問題が取り上げられていて、
スティーブン・キング自身も重度のアル中で、そのうえ雑多な薬物中毒でしたので、この辺の描写は読んでいて非常に怖いのですが、
その後の展開といいますと、ま~、絶対にキューブリックの映画とは繋がりません。
むしろ、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演映画的なテイストでしか映画化できない。
Ultraviolet Trailer 720p HD - YouTube
(もし、これが『シャイニング』の続編だったとしたら、あなたどうします?)
キューブリックの死後も、いまだに『シャイニング』の映画化についてグダグダ文句言い続けるスティーブン・キングですから、これが彼なりの落とし前のつけ方なのだろう、という気もするのですが、
主人公が40歳くらい、そして彼以上の超能力を持つ少女が13歳という設定。
これ、村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』とほとんど同じ設定でして、
かつてとは違い、今や村上春樹も世界的に有名な作家ですから、
スティーブン・キングが彼の作品を読んでいて、参考にしている可能性もないとは言えませんし、
彼の出版社の編集者たちなら確実に読んでいるはずですけれども、
どうなんでしょうね。
そんで、読んでて面白いと思ったのは、
中年の男と魅力的な13歳の少女の物語ですから、当然、
「ロリコンだろ、それ」と思う人がいるわけで、
小説の中でも、超能力で意思通じ合う二人ですが、それでもまどろっこしいからじかにあって話しよう、という展開になると、
中年男子が少女を誘拐しようとしてるとか、援交しようとしてるとか、そういう風に思われるとまずいから、他人に怪しまれない場所ということで市立図書館の前のベンチで話しよう、
ということになります。
「何ならちょっと会って話しようか、じゃあ、井の頭公園そばのスタバで」とは成らんわけで、
延々とその辺のことに拘ってるところ、この小説非常に面白かったです。
また、小説読んでいて、私のような日本人って、アメリカの光景についてナチュラルにイメージすることができなくて、
上述の二人が図書館の前のベンチで待ち合わせをするシーンで、
吉祥寺の図書館をイメージして話読み進めていた自分がいて、自分自身、少々失笑してしまいました。
「そっか、わたしにとってはニューイングランドって吉祥寺だったんだ」と、結構びっくりしたんですが、
ちなみにこちらは、吉祥寺の成蹊大学。安倍晋三首相の出身校です。
では、登場人物については、どのようなイメージで読み進めたのかといいますと、
スティーブン・キングの作品は片っ端から映画化されていますので、
いまや、彼の小説の登場人物を脳内映像化するということは、以前彼の作品の映画化に出演した役者の誰かを利用するということになっています、私の場合。
このオーディオ・ブック、
Doctor Sleep AudioBook Stephen King Part 2 of 2 ...
しゃべり方が、『地獄の黙示録』のマーティン・シーンとすごく似ています。
かれは、1984年のキング作品映画化『炎の少女チャーリー』に出演しています。
マーティン・シーン、13歳のジョディ・フォスター相手にロリコン狼藉はたらく役を『白い家の少女』で演じた前科があります。
はい、主役は、私の脳内では、マーティン・シーンが若かったころに決定。
ちなみに、新潮文庫カバー。
狭い世界です。
マーティン・シーンと『キャリー』のシシ・スペイシクの出世作です。
いやあ、本当に世界は狭い。
じゃあ、超能力少女は、誰がいいのか?というと、
これは間違いなく、クロエ・グレース・モレッツ。
『Doctor Sleep』の後半は、超能力集団とヴァンパイアの集団の抗争に眼目が置かれるのですが、
ヴァンパイア集団の頭目が、13歳の超能力少女のことを「ビッチ・ガール」と呼んでいて、
むろん、「ヒット・ガール」のことを想起させられるのですが、
『キャリー』のリメイクの製作期間と『Doctor Sleep』の執筆期間ってほぼ重なっていますし、
スティーブン・キングも、クロエ・グレース・モレッツ念頭において小説書いてたんじゃないか、という気がします。