キンドルで期間限定無料お試しマンガというのがあります。
知名度の低いマンガや、知名度はあるけど長編すぎるとか、有名だけど古典化して
あまり読まれることのないマンガの一巻目とか二巻目を一か月程度の期間ただで公開しているサービスなのですが、
わたくし、このサービス、というか、ネットにおける立ち読み(私の場合はソファーに寝転がってですが)、
もし、第一巻、第二巻あたりでドはまりしたら、後続巻をサルのようにダウンロードし続け、気が付いたら一万や二万費やしていた、という羽目に陥らないか?という危惧、持たれた方いらっしゃいませんか?
私に関しては、マンガを一巻から読み始めるという本来は正しいはずの習慣がなく、中途の巻から適当に読み始め、ラストなんかどうでもよくて、飽きてきたと思った巻で読むのが終わります。
そういう読み方していても、マンガって楽しめるものですし、わたしの「映画の見方」 の理屈に即してマンガを見るならば、当然そういうことになります。
でも、
しかし、
ついに、やらかしてしまいました。
気が付いたら、岡田和人のマンガのダウンロードに万札費やしてました。
マンガ読んで、ここまで夢中になったのは楳図かずおの『漂流教室』以来のこと。
岡田和人の『いびつ』は心に沁みました。
いびつ ♭.1【期間限定 無料お試し版】 (ヤングチャンピオン・コミックス)
- 作者: 岡田和人
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この手のストーリーを私的に言い表すなら、密室どん詰まり恋愛系。
ありきたりの現実と戦ってありきたりの現実に負けた、そういうたぐいの恋愛ストーリーで、
現実と戦うわけですから、周囲の理解など得られようもなく、二人だけが孤立して、最終的にはやるせない破局に至るというもの。
わりによくある話ですし、そういう映画もけっこうあります。
そして、周囲の理解得られないような恋愛の形ですから、世の中の7割くらいの人がどんびいてしまう形の恋愛だったりもします。
つまり、
こういう映画だとか、
(マゾという言葉は、この原作者マゾッホに由来します)
こういう映画だとか
(むろんロリコンって、この小説の主人公に由来する用語なんです)
あと日本にもこんな映画があったり、
愛のコリーダ ~IN THE REALM OF THE SENSES~ (Blu-ray) (PS3再生・日本語音声可) (北米版)
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(阿部定事件ですわね)
岡田和人の『いびつ』、過去にこの系統の物語は枚挙にいとまありませんし、それら諸作品のパーツを引っ張ってきて組み立てなおせば、新しい作品いくらでも作れるんでしょうけれども、
まあ、
明らかに、この作品も元ネタの一つだったりします。
また、男女の恋愛のうち性行為って、露出狂の人以外は、密室で行うわけですから、
必然的にラブストーリーは密室化しやすいものです。
そして、その恋愛が、周囲の現実に埋もれて陳腐化することを良しとするかしないかの分かれ目があって、世の中のほとんどの人たちは、陳腐化する方向を選択し、馬鹿げた結婚式を挙げて、
家庭を築き、子供ができると互いにパパママとか呼び合ってだんだんセックスレスになっていくのですけれども、
まあ、それはいいとしまして、
究極の密室どん詰まり恋愛系作品といいますと、
割れたジャムの瓶をデレク・ボガードが踏みなおすシーン、見ていると、息が詰まります。
そして、
『いびつ』の主人公も貧乳という設定。
世の中では、「男は胸の大きい女が好き」という偏見があります。
だから、どんな女であろうと胸が大きい分には、
男はその女を何で好きなのか?という説明を周囲にする必要がありません。
それに対して、
貧乳を好きになると、どうしてその女を好きなのかを周囲にいちいち説明しなくてはならなくて、めんどくさい。
密室恋愛だと、そういうめんどくさいプロセス省けますから、
密室どん詰まり恋愛ストーリーって貧乳と相性がいいのでしょう。
また、
『いびつ』ってすでに映像化されているのですが、
日本映画コメディ Ibitsu(2013) いびつ 全ムービー18 YouTubeの 新しいアジア作品 ...
ふざけんなよ、と。
この手のエロ指数の高いマンガを映像化すると、エロ要員的な二流の女優がキャスティングされることが常であり、
本来、マンガのなかでは理想の女性を描いているはずなのにもかかわらず、
映像化されてみると、その理想の女性がB級大根女優によって台無しにされた、というのが普通です。
『愛の嵐』のシャーロット・ランプリングくらいの女優つれてこないと『いびつ』って映像化できんわな、したらいけんわね、と私は思うところ。
もし仮に私に配役の権限があったとしたら、誰にオファーする?と考えると、
橋本愛くらいしか思いつきません。
まあ、本人にその気があっても、事務所絶対許さんでしょうけど。
世の中が恋愛を禁止するような状況が成り立った場合、
当然恋愛は、密室化します。
1984 (John Hurt) - Official Trailer - YouTube
共産党の許可なき性行は犯罪。その状況下で、二人はセックスするにいい感じの部屋を見つけるのですが、
永遠に続くと誓い合ったはずの恋愛を、共産党の拷問で黒歴史につくりかえられてしまいます。
性欲を抑制できるのが優良人種の上層階級の証。そういう欺瞞のはびこった100年前のイギリスだと、こういう方向に話が進みます。
男と女がセックスするのに羞恥心のいらないエデンの園みたいな場所があったらいいのに、
おそらく、そういう話です。
この話も実は、密室どん詰まり恋愛の一つの形なのでしょう。
恋愛ストーリーの中で設定される密室って、突き詰めればエデンの園なわけで、
そういう場所で朗らかにセックスする二人について、英国文学は繰り返し作品を算出してきました。
そして、そういう過去作品と比べると、『いびつ』の特徴的なのは、
とにかく、セックスをしない。
ひたすらオナニーの繰り返し。
え、、それ、面白いんですか?と言われると、
面白いです、とっても。そして、泣けます、としか私には言えません。
それから
一貫して、この手のテーマを映像化し続けた人物というと、
増村保造をあげるべきでしょうか。
おそらく、『いびつ』の世界に最も近い映像作品というと、この作品でしょうか。
この映画好きな人だったら、『いびつ』全巻ダウンロードするでしょう。
人体をバラバラにこわして、作り直す。
そんなことは、無理に決まっているのですけれども。
『いびつ』のテーマに通ずる作品です。
変態文学の巨匠谷崎純一郎の作品も増村保造は映像化してますし、
その衣鉢を継ぐ変態作家、三島由紀夫の主演作の監督もやってます。
この辺のスチール画のセンス、
現代のエロ漫画のセンスに近いものを感じてしまいます。
1970年ごろって、常識のくびきというか、社会のタガが一瞬外れた時で、
本当だったら、脱ぐはずのないレベルの新人女優がどんどん脱いでいて、びっくりしたりします。