日本映画史上、最も長期に渡って製作され、最も観客動員数が多く、尚かつ海外でも有名であるシリーズがゴジラですが、
それ故に、このブログでもゴジラが右に歩くか左に歩くかを考察の対象にしているのですけれども、
そういういつものこのブログの趣旨から外れて、普通に映画を考える題材としても、ゴジラシリーズはとても興味深いものであります。
これを見ると、日本の映画の状況がだいたい掴めてしまいます。
年度別 国内のスクリーン数 観客動員数 公開本数 興行収入など
そして、これはゴジラシリーズの公開年度と観客動員数ですが、面白いのは、昭和ゴジラシリーズは、一万単位で観客数が発表されているのに、平成ゴジラシリーズは十万単位で発表されています。
打ち切りになった最後の作品がかっきり100万人というのは、どう考えても怪しいですよね。
全般的に動員数を見てみますと、平成ゴジラの第一期は、結構客入っていますね。ただ、観客動員数に対して配給収入が少ないことから、タダ券ばら撒いてたんじゃないか?という疑惑はありますけれど。
まあ、それはともかく、平成一期ゴジラの観客動員数を目安に昭和のゴジラを考えてみますと、66年度の南海の大決闘でオワコン臭が漂い始め、67年度のゴジラの息子でほぼ終わってしまってのがわかります。
69年度のオール怪獣大進撃以降は、ミレニアムゴジラ並の客入りであり、子供の数が今の二倍いた当時のことを考えあわせると、
実に寒い客入りであることがわかります。
54 ゴジラ 961万人
55 ゴジラの逆襲 834万人
62 キングコング対ゴジラ 1255万人
64 モスラ対ゴジラ 720万人
64 地球最大の決戦 541万人
65 怪獣大戦争 513万人
66 南海の大決闘 421万人
67 ゴジラの息子 309万人
68 怪獣総進撃 258万人
69 オール怪獣大進撃 148万人
71 ゴジラ対ヘドラ 174万人
72 ゴジラ対ガイガン 178万人
73 ゴジラ対メガロ 98万人
74 ゴジラ対メカゴジラ 133万人
75 メカゴジラの逆襲 97万人
84 ゴジラ(84) 320万人
平成ゴジラ
89 ゴジラvsビオランテ 200万人
91 ゴジラvsキングギドラ 270万人
92 ゴジラvsモスラ 420万人
93 ゴジラvsメカゴジラ 380万人
94 ゴジラvsスペースゴジラ 340万人
95 ゴジラvsデストロイア 400万人
98 GODZILLA 360万人
ミレニアムシリーズ
00 ミレニアム 200万人
01 ゴジラ×メガギラス 135万人
02 大怪獣総攻撃 240万人
03 ゴジラ×メカゴジラ 170万人
04 東京SOS 110万人
05 FINAL WARS 100万人
84年に復活して以降のゴジラは、東宝での位置づけ、客入り、ともに安定したものであるのですけれど、
昭和のゴジラシリーズは、日本映画の最盛期に始まり日本映画の衰退期を辿ったものであるので、映画の歴史と重ね合わせると色々面白いことがわかります。
白黒ゴジラ まず、主役級のところに、志村喬という大物俳優が収まっている。黒澤のサブである本田猪四郎が監督をしており、制作費を考えても、ゴジラFINALWARSみたいなレベルの作品でないことは十分わかります。ただ、機材がしょぼかったこと、日本が貧乏だったことから、白黒であり、音響も悪い。
更に言うと、ゴジラがぶっこわすような都市の光景もまだ出来上がっていません。
ただし、この頃の観客動員数は、映画全体で10億弱。58年には史上最高の11億に到達し、日本映画の絶頂期となります。
54 ゴジラ 961万人
興味深い点は、この映画、大作期待作がわりあてられる正月や盆の公開でなく11月の公開です。
55 ゴジラの逆襲 834万人
こちらの公開はGWで、子供向けでない大人向けの作品の公開される時期ですね。
62 キングコング対ゴジラ 1255万人
ゴジラシリーズ最大のヒット作であり、最初のカラー作品ですが、映画は既に斜陽の坂に入っています。61年の観客動員数は前年比のマイナス20%、62年もそれに近い数値で、63年には58年の最盛期の半分にまで観客数が激減しています。
わずか三年で、映画は観客数を半分にしてしまったのですが、その原因としては59年に皇太子の成婚がありましてテレビが普及しています。それから映画の代用品になるレベルのテレビ放送がなされるまで二年ほどのタイムラグがあったということなのでしょう。それでも、この時のテレビは白黒ですから、映画にはカラーという特典があったんですけれども、カラーテレビが普及して以降の映画の凋落というのは、基本的に今も続いている状況です。
70年くらいには、カラーテレビの普及率が50%になりまして、それ以降のゴジラ作品は200万人の動員数を割っています。
64 モスラ対ゴジラ 720万人
64年度の観客数も前年比マイナス15%です。そのようなことを考えると、モスラ対ゴジラの観客動員数は、前作と比べると寂しいものではありますが、非常に健闘していると言えるでしょう。
東京、大阪、東京と破壊したゴジラは、四作目で名古屋を舞台に選びました。
名古屋が地味であり、壊しがいがないというところも、この作品の寂しさにつながっています。歌にしろ映画にしろ、名古屋を舞台にするようだと、もう終わり感が漂い始めるもんです。
60年代が高度経済成長の時代であり、映画の入場料金は10年で5倍値上がりしたのですが、映画は逆に観客数を5分の一にまで減らします。
64 地球最大の決戦 541万人
黒澤明が『赤ひげ』を締切までに完成できなかったために急遽製作された映画だそうです。正月興行に合わせての急ごしらえでしたが、これ以降、ゴジラ作品の正月公開が伝統化してゆきます。
そして、急ごしらえゆえに、企画を詰める時間がなかったのでしょう。本来ピンで主役張れるラドンもモスラも出しとけってことなんでしょう。急ごしらえが理由なのかそれとも制作費の問題なのか都市破壊というスペクタクルがこの作品では放棄されていますし、ゴジラが街を気持ちよくぶっ壊す作風は84年まで封印されることになります。
65 怪獣大戦争 513万人
日本映画はまたしても前年比マイナス15%の観客数にとどまります。にもかかわらず、500万台を維持したこの作品は検討したと言えるのではないでしょうか?
ゴジラが赤塚不二夫のギャグしている作品なんですが、子供心に「やめてくれよ」と思っていたんですけれど、
今になって舞台裏の状況がわかるようになると、
「大変な時代だったんだな」と同情することができるようになりました。
500万前後で一旦観客数が安定しますが、逆に言うと、大人が一切見なくなって子供だけを対象にした映画になった故の安定だったのでしょう。そんで、必死になって媚振りまいていたんですね。
X星人のコスチュームとか見ましても、意外にキッチュな面白さに満ちている作品だったりします。前作よりははるかによくできていますわ。
前作、今作で観客動員数500万を維持しますが、前作の併映がクレージーキャッツ、今作の併映が若大将。どちらも客の呼べる人気作でして、その辺が、次回作との大きな差なのかもしれません。
66 南海の大決闘 421万人
日本映画の観客動員数は、この頃少し安定します。景気よかった時代ですし、カラーテレビの普及まであと数年の猶予がありました。それでも、耐え切れなくなって、映画館が次々と店じまいしていきます。
昔の新聞の映画欄を見ると、全国津々浦々に映画館があったことに驚かされるのですが、70年代前半にはそういう映画館は無くなってしまいます。
この作品に関しては、『南海の大決闘』というけれど、実のところは都市のミニチュア制作費が捻出できなくなったゴジラ作品です。
なんでゴジラがエビと戦うんだ?というのが、未だに私には解せません。
67 ゴジラの息子 309万人
今までの作品の観客動員数の減少は、映画産業の衰退が大きな原因でしたが、この作品に関しては作品自体に問題があるのでしょう。
前作でエビと格闘していたのが不評で、子供がゴジラを見限ったってのもあるでしょう。もしくはテレビでウルトラマン見てたほうがはるかに面白いってのもあったかもしれません。
ちなみにウルトラマンは66年、ウルトラセブンは67年です。
ちなみに、前作の併映は夏木陽介、今作は舟木一夫の主演作。正直これじゃ、子供に連れてってとせがまれても、大人は嫌だって言うでしょ。家でウルトラマン見てろって諭すでしょ。
正直、この二作は、見てない人多いでしょうね。キッチュすぎますわ。
68 怪獣総進撃 258万人
なんで、怪獣総登場になるのかというと、この作品でゴジラを打ち切るつもりがあったからだそうです。最後ぐらいゴロザウルスみたいなやつにも出番与えてやろうか、という高校野球9回の代打みたいな作品でしょうか。
子供心に、原爆で進化したゴジラと昔のまんまの恐竜のゴロザウルスが一堂に会したら能力的に見劣りしすぎるだろ、と思っていたんですが、みんな仲良くフラットな構図で記念撮影するように画面に映っていらっしゃいました。
これ以前の作品には、一応ちゃんとした併映があって、子供連れの大人にもアピールする要素があったんですが、
この作品の併映は『海底軍艦』の短縮版。
もう、完全に子供しか相手にしていません。
60年代後半の映画の観客動員は、さっきも書いたとおり、カラーテレビの普及までの執行猶予期間といった感じで、わりに安定しています。
にもかかわらず、ゴジラシリーズは着実に客を減らし、作品のクオリティーを下げていきました。
69 オール怪獣大進撃 148万人
プロデューサー田中知幸氏の熱意により、子供騙しでもいいからゴジラを続けることが決定。
そして、テレビの子供向け番組数編と抱き合わせた『東宝チャンピオンまつり』という形式により、夏冬春の休みごとに子供向けのプログラムとしてゴジラシリーズは上映されることになります。
ちなみに、わたし、この作品だけ見たことないんですよ。テレビや名画座で見る機会ないですし、見ようというガッツも湧きません。
作っている側も破れかぶれだったんじゃないでしょうか?
なる夏冬のかきいれ時を子供番組におんぶに抱っこという形で東宝は数年間息をつないでいくことになるのですが、何かと金のかかる怪獣映画を年に三本も制作できるわけありませんから、『チャンピオン祭り』はゴジラシリーズ旧作のリバイバル上映が多かったです。
ちなみに70年には『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣』がゴジラ映画の代わりに制作されています。
私見たことないですし、多分見ないまま人生終えるでしょう。
一年に三回ゴジラ系の映画が掛かるということがしばらく続くことになりますが、それでも一年に三回が2回に、二回が一回にという具合に『チャンピオン祭り』は先ボソってゆき、78年をもって終了します。
ちなみに78年は『未知との遭遇』や『スターウォーズ』の公開された年ですし、アニメが特撮を駆逐してしまった頃で、『宇宙戦艦ヤマト』が大人気の頃です。
そんな年に『地球防衛軍』のリバイバルなんか見に行きたい子供がどれだけいたんでしょう?
71 ゴジラ対ヘドラ 174万人
72 ゴジラ対ガイガン 178万人
この頃になると、日本映画全体の観客動員数は2億人を下り、全盛期の5分の一以下で今後しばらく安定します。
安定したと言えば言葉がいいですけれど、長期不況の失われた30年といったところでしょう。
私の最初の映画館体験と言えば、長年改修も補修されていないボロボロ床と椅子、そして汚いトイレ、そんなものでした。90年代半ばまでそういう映画館ポツポツといたるところにありましたよ。
意外にこの二作は興行的に頑張っています。観客減らす一方だったゴジラシリーズですが、二作続けて前作以上の客入りです。
旧作ばかりの『チャンピオン祭り』に新作が登場する、しかもガイガンとかかっこいい新型怪獣登場となると、喜ぶ子供大勢いたんでしょうね。
73 ゴジラ対メガロ 98万人
この作品に関しても、『南海の大決闘』同様に、なんでゴジラがカブトムシと戦うんだ?というのが私には解せません。
同じことを考えている人はたくさんいたのでしょう。まんまと客を減らしています。
74 ゴジラ対メカゴジラ 133万人
こうやってゴジラシリーズを概観していくと、ゴジラと喧嘩して好評だった怪獣って実はあんまりいないんですね。
モスラ、キングギドラ、ガイガン、それにメカゴジラの四匹だけ。
アンギラスとラドンはゴジラの舎弟扱いが関の山です。
それゆえ平成になってゴジラとタッグ組まされた怪獣が、キングギドラ、モスラ、メカゴジラなのはむべなるかな。
できることなら、ガイガンも登場させて欲しかったのですが、あの腹の電ノコの人工臭と非効率性は、奇特な宇宙人の存在を前提にしているので、なかなか平成の世に再登板の機会がなかったのかもしれません。
それはいいとして、メカゴジラですが、この作品映画として、結構面白い。
岸田森、平田昭彦、大門正明、草野大悟と実にいい役者が揃っており、非常にテンポのいいドラマ展開で、優れたプログラムピクチャーを見ているようです。
女の人たちもきれいだし。
海洋博前の沖縄を舞台としており、首里城周辺の沖縄の光景が見ていて心地よい。
怪獣の対決もメリハリ利いており、退屈せず見ることができます。
私ごとですが、これ、5歳くらいの時にテレビで見たことがあって、おそらく最初のゴジラ映画なんですが、つい先日再見しましたんですが、
この映画音楽大体覚えていました。
『用心棒』の佐藤勝による楽曲なんですが、何十年も忘れず頭に残る楽曲でした。
75 メカゴジラの逆襲 97万人
この作品が、ゴジラシリーズ最低の客入りになっております。前作と比べると映画として面白くないってのがつらいです。
前作がそこそこ商売になったから、二匹目のどじょう狙ったんでしょうけれども、
そういうの子供にも見透かされたって感じです。
ただしかし、メカゴジラの映画撮っといてよかったな、東宝は、と思う次第。
興行的に大したことなくても、以後オモチャの販売で相当利益出るはずですし、海外を含めたビデオ販売でも相当稼いだことでしょう。
キャラ立っている悪役ってのは、経済的に価値あります。エビやカブトムシデカくした奴らとは違うわけです。
平成ゴジラの時代にも復活して、稼いでくれましたし。
前回で、昭和ゴジラシリーズの客入りと日本映画全体の観客動員数を比べてみました。
ゴジラ映画は、どのくらい客が入ればよろしいのかということですが、
400万以上で勝利宣言、200万以下で打ち切り考慮というところでしょうか。
私事ですが、劇場公開時に見たゴジラ映画は、この平成ゴジラ第一期のものだけです。その当時、私は怪獣ごっこして遊ぶような子供ではなくて、それなりに歳いってました。
とりあえず一本ずつ語ってみます。
84 ゴジラ(84) 320万人
- 出版社/メーカー: 東宝ビデオ
- 発売日: 2002/04/25
- メディア: DVD
- クリック: 24回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
しかし、それがどこまで成功していたのかは、非常に疑問。
所詮、こんな怪獣いるわけないんですから、もうちょっと柔軟にやってくれよと思いつつ、スーパーXってあんなもんあるわけないじゃない、これでもハードSFか?というか、子供ながらにそんなことを思ってみておりました。
最近の原発事故で初めて知ったのですが、原子炉の冷却材としてカドミウムを使うらしいのですが、
ゴジラの口にカドミウム弾打ち込んでいるシーンで、「ゴジラをイタイイタイ病にしてどうすんのよ?」と誤解しながら見ていたんですが、まあ、子供からもそのくらい馬鹿にされるにいられない要素持った映画でした。
そして、それ以上に役者に魅力がない。それ故に主人公たちのサバイバル冒険に共感できない。
なんでこんな奇妙なキャスティングがまかり通ったんでしょう?
小林桂樹よりも首相にふさわしい人いくらでもいただろうにと思うし、あのラストの涙ぐむシーンは勘弁して欲しかった。
ろくすっぽ映画製作しなくなった映画会社って、目が曇っていたんでしょう。企画力、プロデュース能力ひどいですわ。新入社員も採用していなかっただろうから意思決定を司る上層部の老害もひどそうですし。
セットに金かかっているのはわかるんですが、有楽町を本物と同じに作ったら、ビルのオーナーからクレームがついて壊せなかったとか、
痛いエピソードです。
壊したらダメって集英社とか三菱に言われたんだったら、急遽看板を架空の企業のものに入れ替えるとかしたらよかったのに、そうしなかった。
「集英社壊すけど、その代わり御社の雑誌には特別にゴジラ企画を許可します」とかの条件提示しなかったんだろうか?
この時期の映画会社は、真面目に仕事してないってのがよくわかります。
それ以上に、もっと臨場感あるカメラワークと照明は工夫できなかったのでしょうか?
このシーン、最悪。ミニチュアをどう撮ったら本物に見えて、どうとったらおもちゃに見えるかのノウハウが完全に東宝から失われていたのがわかる。
こんな場末のお化け屋敷みたいなもん見せられても、観客としてリアクションに困る。
そして沢口靖子の演技。正直、なんだありゃ、ゴジラよりも凄まじい破壊力です。
多くの人が期待していたから、320万人の観客動員につながったわけですが、
見所もないわけでもないのですけれども、寒い映画でした。こういう寒い出来の映画を正月に公開するのは控えて欲しいものです。私の見た映画館は、東宝の名が冠された『・‥東宝』という劇場で、20年以上改装のされていないボロボロのものでした。それゆえ暖房の効きも悪くすきま風もあり、辛かったです。
正直、武田鉄矢、浮いてるんですよね。決して彼の存在が映画にマイナスになっているわけではないと思うんですが、全般的にユーモアも余裕もないクソ真面目な作風だけに、必然的に浮いてしまうんですよ。
もっと、こういうノリをベースにすれば、映画として魅力がでたのにと思うんですが。
平成のゴジラと昭和のゴジラの違いってのは、
平成のゴジラは、SF色を強く出すために、自衛隊や日本政府の組織を描くことに時間の多くを費やし、
市井の人の視点から怪獣を見上げることをほぼ放棄しています。
それが、クソ真面目でな印象を与えますし、本来でたらめな基本設定の怪獣映画でそんなことやっても意味ないだろうという感慨にいたらざるを得ません。
それでも、二作目以降のバブル期のゴジラシリーズには程よい脱力感がみなぎっており、それが作品の質を底上げしていますが、
ミレニアムシリーズとなると、もう、息苦しくて見てられないって感じです。
89 ゴジラvsビオランテ 200万人
90年代のゴジラのキーパーソン三人、監督脚本・大森一樹 特技監督・川北紘一 サイキック少女役・小高恵美の揃いぶみですけれど。
いろんな意味で不満の残る映画でした。
興行的にも今ひとつな成績です。
ゴジラ84の失敗から、SF濃度を高めることと本当のゴジラファンを監督にすることが方針だったとは思うのですが、
この程度のSF設定なら初代ウルトラマンのレベルだよなとか思いましたし、
大森一樹の演出ってどうよ?と思いましたし、今でも思っています。
ヌーヴェルヴァーグ的な手抜きが見ていて気持ちが悪い。もうちょっと力めと当時も思いましたし、今も思っています。
峰岸徹の演技、あれ、どうです?日活のプログラムピクチャーっぽいでしょ?東宝の特撮映画としては、何か違うんですよ。
それでも、ゴジラ84では有楽町のビルを壊すことができなかったのに、今作では大阪中之島を全壊にした点は評価できますし(いろいろビル所有者と粘り強い交渉があったのだと思いますが)、特撮は全般的に良く出来ていました。
私がこの映画を見たのは某地方都市の、20年以上改修も改装もされていないボロボロの映画館でした。今振り返るとバブルの真っ只中の華やかな時期だったはずなのですが、完全時時代から取り残されたようなブラックホールみたいな映画館でした。
そして、この後すぐに、この映画館は取り壊されてしまいました。
全盛期の60年に7500あった日本のスクリーン数は、70年には3200と半減。それだけでなく、観客数は五分の一になっているのですから、映画館は以前と比べると半分も人がいない状況が当たり前になっています。
その後も映画館は減り続け、1993年にはスクリーン数は1734まで減っています。
今は、シネコンによる合理化によりスクリーン数だけは激増し3400まで倍増しています。しかしながら史上最低の入場者数の94年の1億2000万人と比べてせいぜい40%しか客数は増えていませんから、日本の映画館は今が史上一番ガラガラなんですね。
最近、シネコンで一人とか二人で映画見る機会増えたと思ったら、実はそういうことだったんです。
91 ゴジラvsキングギドラ 270万人
私は、この映画、かなり好きなんですが、毛嫌いする人が多いです。
その理由、私もよくわかるんですが、前作同様に大森一樹のヌーべルヴァーグ的おちゃらけというか、学芸会的手抜きに対してどこまで真面目に怒れるか、それとも許せるかの問題でしょう。
正直、、もうちょっと真面目にやれよ、というか、60年代の東宝映画見習って戦争に関するシーンはちゃんと撮れよと思うんですが、
ついさっき、ミレニアムゴジラと比較してみるとわかったことなんですが、
ゴジラシリーズって、あんまり糞真面目にやっても面白くならないんですよね。
元々の設定が荒唐無稽ですから、おちゃらけた部分って絶対必要なわけです。
ゴジラシリーズの一番の当たり作、ゴジラ対キングコングなんて、ギャグに走った相当におちゃらけた作品で、糞真面目な設定持ち出して自爆するよりもああいうノリじゃないとシリーズとして毎年作ることなんかできないでしょう。
今作品は
今からみるとしょぼいですけれども、合成画面がキレイに仕上がって、原爆ドームの上を飛ぶキングギドラが素敵。
そしてやたらとでかい新宿西口のセットもよくできています。
これ、すごいっすわ。
ゴジラ84も含めて、映画と特撮業界の不況から、都市を破壊しまくる怪獣ってずっと制作されていなかったのですが、この映画で、一特撮ファンとしての長年のストレスが全て吹き飛んだような気がしました。
それゆえ、この映画、けなしてどうするよ?この映画けなす輩は、特撮の敵だわね。
冗漫な嫌いのある怪獣対決シーンも、スッキリまとまっていて見やすいですし、キングギドラの体から飛び散る金粉など画面的にも美しい。
それ以外にも、中川杏奈が綺麗だってのもありましたし、小高恵美が前作から二年経って大人になって綺麗になっていたというのもあります。
この時の中川杏奈、演技何かどうでもいいって感じです。素の存在感と声の良さとルックスだけで十分役者やっていられます。
普通の場合、映画に美人複数出す場合は、キャラの方向性全然別にするはずでして、
一人がセクシー系美女なら、もう一人は清純系と色分けすべきです。そして、この映画の場合、それが完全にできています。
このほかに原田知世の姉も出ています。
もともと東宝の特撮映画って、東宝自社抱えの新人女優に活躍の場を与える目的もあるので、昔から怪獣映画には美人が多いんですが、
小高恵美って沢口靖子に続く第二回東宝シンデレラのグランプリでして、ちなみにその時の次席が水野真紀。
小高恵美の映画出演歴ってほとんど平成ゴジラシリーズに限定されるんですが、その当時の日本映画の鍋底の状況を考えると仕方のないことなのだろうと思わされます。
92 ゴジラvsモスラ 420万人
東宝シンデレラといえば、この作品で小美人を演じている二人もグランプリとその次席です。
この二人に関しては、映画もほとんど出ていません。それじゃ何のために東宝はシンデレラコンテストなんかやって女優の卵探してたんだと思うんですが。
もともとモスラの小美人って、ザ・ピーナツが演じていたんですが、今見るとあの二人って双子であることで外見上のインパクト強いですけれども、あんまり美人じゃないですよね。
でも、綺麗な女の子が演じたらいい小美人のコンビになるのかというと、全然そんなことありません。
この映画は、平成ゴジラとしては一番のヒット。60年代のゴジラ作品の客入りと比べてみましても、映画の置かれた状況を考えるなら、64年のモスラ対ゴジラ並の大ヒットと言えるのではないでしょうか。
今作のヒットの原因としましては、大森一樹が監督を降りて脚本だけの裏方に回ったことで、おちゃらけ演出がなくなって、ちゃんと真面目な顔した映画になっていることでしょうか。
もう一つは『みなとみらい』という、怪獣がプロレスやるにふさわしい舞台で破壊の限りを尽くすという、みててカタルシスの得られるものに仕上がったということがあるでしょう。
それ以外にも、小林昭二、篠田三郎という、テレビ世代で比較的若い観客には嬉しい役者が揃っていることでしょうか?
土屋嘉男とか田崎潤では、ピンとこない年齢の特撮ファンって結構いるんですよ。
平成ゴジラシリーズはすべて正月映画として公開されたのですが、今では日本映画で観客動員500万以上なんてザラにある話ですから、この程度で当時の東宝は正月の勝負していたのかと思わさせられます。
ビオランテが 大阪花博
キングギドラが 新宿都庁
モスラが みなとみらい
メカゴジラが 幕張
スペースゴジラが 福岡
デストロイアが 都市博の為の有明
という具合に、平成ゴジラの破壊の場所は、日本がバブル期に計画建設したものばかりで、それ故に平成の第一期ゴジラは、『バブル・ゴジラ』と呼ぶのがふさわしいかと思われるのですが、
映画自体はというと、かなりしょっぱい現実の中で製作されています。
85年のプラザ合意により、一ドル240円が120円までの円高になります。
その後、87年くらいから、株と土地に金が回り始め、日本はバブル景気に突入するのですが、
実のところ日本映画はバブルの恩恵を全く受けておりません。むしろバブル期には、辛気臭い日本映画なんて見てられっかよ的に映画はさらに衰退しました。
バブルの87年と橋本龍太郎政権下で失われた20年が決定した97年時のデータを比べてみますと
スクリーン数 87年に2050あったスクリーン数は、以後も減り続け93年に1730で底を打つ。それから増加に転じ、97年で1900。
観客数 87年に1億4000万人。94年に1億2200万人で底。97年に1億4000万人に回復。
日本映画公開本数 87年に286本。91年に230本で底。97年に278本に回復。
このように、バブル景気は映画に何の利益ももたらしていなかったことがよくわかります。そして、本来一番景気の良かった時期に日本映画はどん底にあったわけです。
そして、その時期が平成のゴジラシリーズの制作時期とほぼ一致しています。
怪獣映画の場合、オモチャの売上も見込めますし、多分、不況に強い体質持っているんでしょう。
93 ゴジラvsメカゴジラ 380万人
ウルトラマンが体をすっと伸ばして空を飛ぶ姿にはリアリティーがありますが、メカゴジラやガイガンみたいな連中が空を飛ぶ姿にはなんのリアリティーも感じません。足の裏から火を噴いても、あんなずんぐりむっくりな胴体が空飛べるわけないだろと見てて思うんですが、
そういう点を真面目に解決しようとしても、あんまり実りある結果にはならないでしょう。
所詮怪獣映画って基本設定から無茶なんですから。
ミレニアムゴジラでは、こう言う点でクソ真面目で、それがオタ臭を強くし、一般人を遠ざけていたような気がします。
こちらのメカゴジラではそのへんは適当に済ませていました。
そして、今作に関しては、何といっても小高恵美でしょう。
今までは、ゴジラ映画に彩りを添える美少女みたいな役割に過ぎなかったのですが、今作ではメカゴジラに乗り込んでゴジラと戦うことになります。
普通は美人女優を複数登場させるのが当方の特撮映画なんですけれども、実質、この映画のヒロインは小高恵美だけです。
さすが、東宝シンデレラだけあって、見事な美人さんの21歳に成長しました。
小学生の時に平成ゴジラシリーズに出会ったような世代だと、イメージ中の美人の原型がこの人によって作られていたりする人も多いでしょう。
あんまり映画出演作品多くなくて、今ひとつ有名になれずに早くに引退した人ですが、特定の年代の一部の人たちには異様に強い影響力を持っているようです。
そして、同様の影響受けた人たちって外国にも多いようで、youtubeのコメント欄を見ると、そういう書き込みがいっぱい。
ゴジラシリーズでの小高恵美は、ちょっと暗くて控えめで上品な女の子で、危さと無縁の小西真奈美って感じなんですが、
youtubeで見ることのできる動画では、普通に元気にB級アイドルしていて、「あれっ」と思ってしまいます。
逆に言うと、演技している時の彼女の品の良さってのは特筆ものです。
東宝シンデレラなんですから、オーディション合格後は演技レッスンみっちりやられるはずだと思うんですが、
小高恵美の場合は、非常に手堅い、オーソドックスな演技のスタイルです。
それと比べると、沢口靖子の演技って一体なんなんでしょう?みっちり仕込まれても彼女の自我は何の変化もなかった、ということなのでしょう。大物になる奴はやっぱ普通じゃないわ、と改めて実感。
小高恵美とか、その次、そのまた次のシンデレラで懲りたんでしょうか、長澤まさみの場合は、やはり、あんまり真面目に演技レッスン施さなかったんでしょう。
成功する奴は、自我が人一倍強くないとダメなんでしょうな。
小高恵美みたいに、若いうちから自分の素の部分と一当たり役の間に溝がある場合、キャリア的には辛いんでしょうな。
小高恵美の次の回の東宝シンデレラ二人。
さすがに、これでは無理だろう、という気がさせられる。
映画が斜陽産業になりきっていたために審査員の見る目も完全に曇っていたんでしょうか?
≪関連≫『ゴジラ対ヘドラ』
≪関連≫『ゴジラ モスラ キングギドラ 怪獣総攻撃』
≪関連≫誰もが子供だったはずなのに