- 作者: 塩田明彦
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2014/01/22
- メディア: 単行本
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この映画に限ったことでなく、
大体上映時間の70%くらいのところで、物語を一回整理しておきましょう的な画面が映されます。
クライマックスに向けて、こんがらがった人間関係やストーリーを分かりやすく整理しておこうという事ですが、
以前の連続テレビドラマだと、録画もツタヤもDMMもなかった時には、
途中の回を見逃してしまった人のために、それまでの話の流れをまとめたような総集編みたいな回が必ずあったそうです。
この、「こんがらがった話を整理してみますと…」的な画面は、俯瞰図とものすごく親和性が高く、高みから見下ろすと人間関係の構図や物語の流れがはっきり分かるという事なのでしょうか。
そして、この形骸化として上映時間の70%くらいのところに空撮、それも視界の開けた海のシーンが入る映画って結構いっぱいあります。
『乱れる』では、このシーンでしょうか。
高台のお寺、死んだ夫の菩提寺での密会のシーン。
「幸二さんは目が見えないの?若くて綺麗な娘さんがたくさんいるじゃないの」
いやいやいや、街を俯瞰している、より広い視界で多くを見ているのは男の方で、この台詞とこの画面には矛盾があります。
この画面は、高峰秀子の台詞が偽りのものであることを暗に示しているようです。
この物語をすっきりまとめようとすると、この台詞の通りなのでしょう。
ちなみに、『乱れる』で高峰秀子が嫉妬する若い娘役の浜美枝 『007は二度死ぬ』
確かに、時代が違う。
『乱れる』を解析する際に、
こちらのシーンの
男から逃げるように女が離れる動線 玉突きのような動線との類似性と、動きとして相反する方向を見る方が、
『映画術』 動線 という 題目には妥当なのではなかろうか、と私は思う次第です。
互いに求め合った時には、離れてしまい、
女が心を鎧で固めたときのみ、二人は近づく、
そういう画面ですし、おそらくそういう物語です。