『ローレライ』みたいなアホ映画と違って、『Uボート』1981年のドイツ映画は、実に骨太であります。
潜水艦はその形状から、進行方向を変えることは容易な事が無いので、よほどな事が無い限り直進します。
洋画の進行方向は−−>ですから、母港を出発するUボートはもちろんその方向に動きます。
基本、ボートの進行方向は変わりません。
−−>等の記号、用語は、自分が勝手に考えたものなので、意味分らないと思いますが、よろしかたったら、まず、こちらをどうぞ……「映画の進行方向」
映画において、画面の向きを切り替えると、登場人物の心理の何かが切り替わったように感じられるので、意味もなく向きを変えてはいけないのですが、
本当に、骨太なまでにボートの向きは変わりません。
潜水艦は進行方向を変えるのが簡単じゃないという縛りもありますが、
ドイツ人は合理的な目的を一度設定すると、それを簡単に放棄したりはしないという男らしさをこの点から自分は感じました。
ただ、「戦士の休息」の法則に従い、死地から離れ心の安らぎを得る時は、逆方向に進みます。
寄港して休暇を取れると乗組員みなが盛り上がっている場面では、
<−−と逆方向に動きます。
その後、命令が下り、寄港せずジブラルタルを突破してイタリアへ向かえと言う事になります。
結局突破できず、フランスの母港にもどることになります。
命拾いした、と皆嬉嬉として、上陸するのですが、敵軍の空襲を港で受けて、死んでしまいます。
このドイツ映画のどこが骨太かと言うと、
−−>の方向に進む時は、目的地に向かう時であり、
<−−の方向に進む時は、目的地から離れる時、状況が悪化する時、本来いるべきでない場所に向かう時(物語は血まみれの戦場を求めているのに安全な環境に向かうのは、そういうこと)と、映画に於ける進行方向操作を、二重三重の意味で用いている事です。
進路を変えて母港に戻りさて一安心、と思ったら、不吉な予感が的中して、敵の空襲で皆死んだ。
画面の方向変更一つで、これだけの意味が滲み出してくる、
これを骨太と言わず、なんと言いましょうか。