「行きずりの街」と「おにいちゃんのハナビ」のどっちが撮影先なのか自分は知りませんが、
両方の映画で、谷村美月は、指演技に開眼したらしく、楽しそうに指で演技しています。
大脳生理学みたいなものをちょっと齧ってみると、大脳の部位のうち手の動かし方に関する部位の体積というのは、他の体の部分に関する体積と比べると、非常に多いのですね。
つまり、手の動きというのはものすごく複雑であり、その動かし方は他の部分と比べ、人間の頭の中の動きをより詳細に示しうるものであるわけということです。まあ、それゆえユビサキ体操が脳を刺激するとか、そういう自己啓発本が書店に並んでいたりするのですが、
頬っぺたの肉の引きつり具合なんかよりも、ユビサキの動きの方が、遥かに心の内奥を表していると一般には考えられるのであります。
それだったら、そういう要素を演技の中に組み込むべしとばかりに、谷村美月は手の演技を「おにいちゃんのハナビ」の中で披露してくれています。
「彼氏?」
「お兄ちゃんです」
「彼氏?」
「だから、お兄ちゃんです」
右手のぬるい形が、妙に笑える。
「ダサいじゃなくて、クール」
話が核心に近づくにしたがって、手の表情に緊張感がみなぎる。
それでも、自分の言っている事に無理があることが分っているときの手の表情。
「お兄ちゃんに足りないのは、自信だけだよ」
確信に満ちた指の表情。
自分の詞に確信を持っているだけでなく、おにいちゃんまでその気にさせようという想いが伝わるユビサキ。
谷村美月本人が、一番よく出来たと語るシーン。
おにいちゃんにおねだりしたはずの携帯を数ヵ月後にクリスマスプレゼントとしてもらう。
んで、おにいちゃんもお揃いの携帯をなぜかゲット。
「はずかしいよ…、まあいいけど」
携帯をなでる指の動きが可愛いと同時にエロい。
自分では自覚してないけど、おにいちゃんの想いのこもった携帯をいとおしく愛撫して、傍から見たら華ちゃんの感情丸分り、という状況を、
ちゃんと理解したうえで演技している、谷村美月。
或る意味、このシーンの繊細でねちねちした指の動きと、
病院の屋上で
「彼氏?」と妊婦に聞かれる時の締りの無い手の表情って対応しているように見える。
「おにいちゃんのハナビ」
題名がエロゲーっぽいんですが、やっぱり、この映画、どこかエロゲーに通じるものがある、と思う。