『クンドゥン』  

マーティン・スコセッシ監督作の『クンドゥン』。

チベットの現人神ダライラマの青年期までを描いた作品です。

 


Kundun - Official Trailer [HD] - YouTube

 

ウィキペディアの『クンドゥン』の項目より

「主な出資者でありアメリカでの配給元であるディズニーには中国から強い圧力があったと言われ、アメリカ国内ではあまり広く公開されなかった。作品の輸入、上映ともに中国では禁止となっている」

 

ちなみにこの作品、制作費が約30億円に対し興行収入が約7億円と大赤字。

中国共産党に歯向かうと大変な目にあうことがよく分かります。

 

何はともあれ、このような政治的に扱われざるを得ない映画ですと、

映画の評価もチベットに対する考え方に左右されることになってしまいます。

わたしは、チベット問題に関しては、

「どう転んだところで中国に正当性はないだろう」

「戦後のどさくさの中で、面倒なことに関わり合いたくない先進国はチベットを見捨てた」

「この前のオリンピックでは、経済的な理由から先進国はチベットを見捨てた」

「中でも特に日本の態度は情けなくて涙がこぼれた」

そんな風に思っているのですが、

では、

かといって、ダライラマ観音菩薩の生まれ変わりであるとか信じる気にはなれませんし、

信仰の自由とか言ったところで、日本の葬式仏教なんかたちの悪い冗談にしか思えませんので、チベットの人たちへ同じ仏教徒だから云々という連帯感もてるかというとそんなこともないですし。

 

この映画は、どうだったのかと申しますと、

そういう政治的な問題に関しては、割とさらっと済ませて、

ダライラマの成長物語としてまとめてあるようです。それゆえ物足りないといえば物足りないのですが。

 

いくつかの興味深い描写がありまして、

少年がダライラマの転生であるかをチェックするテスト。

 

先代の遺品を二分の一の確率で選べるかどうかなのですが、

 

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試験官の表情をちゃんと見ていると、正しい遺品の時に手を触れた時とそうでないときで露骨に顔が変わります。

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この世に生まれ変わりなんかないわけで、そんなことよりもダライラマとしての職務を遂行できる聡明な子供を選ぶことの方が肝だとすると、

大人の顔色をちゃんと読める幼児って、頭の良さの一つの指標なのだな、と。

 

子供が聡明であるとはいっても、しょせん幼児は幼児ですから、そんな幼児に最高権力渡したまんまで国の運営がうまく行くのかというと、

恐らくうまくはいかんのだろう、と。

 

いちいちシャーマンのご神託で国政運営してたのか、まあそりゃ中共に侵略されて終わるわな、と。

 

撮影スタッフにチベットシンパを何人も抱えてチベット寄りの映画なのですが、それでも随所に意外なくらいに合理的で冷静な描写が見られます。

 

 

 そんな中で、この映画の中での最も反中的な個所は、毛沢東の描写。

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 わたくし今まで、数多くの中国製のドラマと映画で数多くの毛沢東の姿を見てきましたが、ここまで似てない毛沢東は初めて。

髪型と黒子の位置以外、実物に似せようという気がまるでない。そして蝋人形のようなメイク。

しかも態度は、ナヨナヨのクネクネ。