東京←→北三陸 の二項対立がなくなった後、何を軸にして物語を進めていくのか?ですが、
大吉さんと春子さんの恋物語を軸にして物語を進めようにも、それは無理というもので、
二人の関係の進展は、画面上の左右対立では示されていないようです。
第五話 井上剛監督
「春子、変わらねばならんのは、むしろお前の方でねえか?」
第五話の海への飛び込みは、アキが自分を変えるためにやっているように思えてしまうのですが、決して自分の為だけにやっているのではありません。
そして、全編通して、アキが自分を変えることで周囲を変えていくパターンが海に飛び込むことから見えてきます。
最終回に、海ウニ死ねの落書きを踏みつけてジャンプしますが、
本当にこのSTOPで踏み込んだんだったら、絶対に海に落ちてしまいます。
しかし、この飛び込みで、ストーブさんの殻を壊すことになったようです。
アキのアップも映りますが、それは第三話の飛び込みシーンの使い回し。
堤防を陸地側から映すと、飛び込みシーンは 必ず ←になるようです。
飛び込んだ海の色、東京の学校のアルミサッシの青色が同じ。
東京の時の音声には、水中での音声のようなエフェクトがかかっている。
← 方向に泳いで、ママとばっぱに言います。「私海女さんになる」
第4話まで ←方向は東京への方向だったのですが、
それは、かつて春子さんが東京に向かい夢をかなえようとした方向です。そして夢をかなえることなく帰郷したのですが、
この海への飛び込みによって、娘のアキが別の形で春子さんが叶えることのできなかった夢をかなえる第一歩を踏み出したという事なのでしょう。
やっぱりこれにしたところで、アキは、自分の為というよりも周囲の為に海に飛び込んでいると言った方がいいのかもしれません。
そして、毎回毎回、海にシンドイことや悲しいことを捨てていたら、海の底はどうなってしまうのだろう?と見てて思ってしまうのですが、
その海の底が出てくるのが、第二部東京編であると私には感じられます。
恐らく、そうやってみんながつらいことや悲しいことを捨てていった結果の海の底のイメージ。
夢の残骸が、廃墟のように海の底に眠っている。
現実問題としては、海の底には、津波の犠牲者や漁師の遺体が人知れず幾体も眠っており、
ダイバーが海に潜って遺骨を拾い集めるイメージと、
東京編のアキがステージの奈落の下で、周囲の人の夢や過去を清算するために活躍する姿は重なって見える。