押見修造の作品中のΩ型の前髪の少女 

リアル世界で私たちは何百人何千人もの顔を覚え、区別する能力を持っているのですが、

マンガのキャラの場合だとそういうわけにもいきませんから、全部で10巻前後のマンガだと、主要登場キャラが20人超えるようだともうほとんど話が分からなくなってしまう。

マンガ家の方としても、二次元キャラのどれがだれなのかを読者が区別つけれるように分かりやすく描き分けをするのですけれど、

その描き分けのパターンが無数にあるわけもないですから、同じ作家のマンガではいつもも似たような顔したキャラ群が登場ということになります。

そして、似たような顔したキャラクターってたいてい似たような内面も持っているもんでして、

そんならいっそ、一人のマンガ家は十五人くらいの役者を専属で囲っていて、それら俳優がそれぞれの作品ごとにいろんな役をいろんなメイクしたうえで演じ分けている、黒澤組とか小津組とかいって常連組のことを示すように、

岡田組とか押見組とかの言い方でそれら描き分けられた一群のキャラクターたちをよんでみる、そんな風こだわり方でマンガを読んでみると、普通の読み方するよりもマンガのことがよく分かるんじゃないか?

ここ最近ブログに書いてる文章は、そういう試みです。

 

押見修造の長編作品にはΩ型の前髪の女性が必ず出てきます。

 

『ハピネス』のノラは主役ですけど、

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以前の作品ではΩ前髪の女性は脇役ばかり。でも脇役なんだけどよくよく考えてみると重要な役ばかりです。

 

『デビルエクスタシー』のシレーヌは、

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サキュバスってどんな生き物なのかを説明するために物語の序盤に大暴れします。

 

『漂流ネットカフェ』のミク。

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 楳図かずおの『漂流教室』のパロディですが、成人が異世界漂流するのでどうしてもsexの問題が前面に出てきます。

性欲処理担当キャラなんですが、髪の色は金髪になったとはいえ、シレーヌと非常に似ているのが一目瞭然。ただ前作と違って彼女の立場弱いですから、なにがしかの悲しさが漂います。

悪役の情婦となっていいように利用され物語のほとんどは悪玉としてふるまうのですが、彼女の心理の動きが意外に作品の重要なポイントとなっています。

 

短編ですが『漂流ネットカフェ』と同時期の『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の岡崎加代。

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 絵のタッチ全然違いますし、こっちの作品では裸になったりはしないですけど、顔と髪型は『漂流ネカフェ』のミクとまるで同じ。

主人公からすると、気の強い人に見えるのだけれど実のところ結構弱い人。

その弱さをむやみに表に出すことはせず淡々としているところが魅力的なキャラでした。

 

そして、この唇、『ぼくは麻里のなか』の柿口依と同じです。

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ついでにいうと、岡崎加代も柿口依も公団住宅に住んでいる共通点がありました。

 

ちなみに柿口依の眼鏡とさえないオーラは『ハピネス』の主人公・岡崎誠に引き継がれています。

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『志乃ちゃん…』の岡崎加代と『ぼくは…』の柿口依って、「中の人同じ」ですから、彼の姓が岡崎であっても何の不思議もないわけです。

 

そして、岡崎誠とノラの二人って、一つのキャラを二つに切り分けたようなもんですから運命的にひかれあっても、当然なわけ。

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押見修造の過去作品をつぶさにチェックしてると、なんで二人が運命的にひかれあうのかが、すんなりと腑に落ちます。

でも、こういう納得の仕方って邪道なような気もするんですが。

 

ちなみに『デビルエクスタシー』のシレーヌが人間をはるかに超えた身体能力を発揮して主人公に襲い掛かるシーン。

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別にネタに詰まって過去作品から流用したわけではないと思いますが、このシーンは『ハピネス』の冒頭のシーンとほとんど同じです。

シレーヌとノラって「中の人同じ」ですから、ま、しょうがないんですけどね。

そういえば、シレーヌって全裸キャラなんですが、ノラの方は下半身裸なんですよね。ま、「中の人同じ」ですから、一応隠すべきところ隠そうとしてるだけ多少はおとなしくなったというべきなんでしょうか。

 

そして、これらキャラが『惡の華』では、木下亜衣。

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単にスクールカーストを肯定する嫌なキャラのように目に映りますけど、よくよく注意して読んでますと、この人時折実にいい表情するんですよね。

彼女の佐伯さんへの感情って、表面的で薄っぺらいもののように読めてしまいかねないのですけれど、Ω前髪のキャラを押見作品で丹念にチェックしていきますと、彼女の佐伯さんへの感情ってもっと深い物、おそらく少々レズッ気の入ったものらしい気がしますし、

そういう点を踏まえて『惡の華』の木下亜衣のコマを見てると、

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なぜ、時折彼女の表情が魅力的に描かれているのかが分かる気がします。

 

そして、このキャラクターの系譜におエロ気担当が多いことからも、

このコマ、

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かなり胸の大きさが強調されてるように見えるのです、