『いびつ』 柿口啓吾のキャラ凝縮感

『すんドめ』はヒロイン・早華胡桃のキャラクター凝縮感が魅力の源泉だとすると、その次作『いびつ』の魅力は、実のところヒロインではなく、ヒーローの柿口啓吾のキャラクター凝縮感にあるのではないか?と、

『いびつ』を何度も繰り返し読むうちに思うようになりました。

 

『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』の物語が多くの登場人物により構成されていたのに対し、『すんドめ』は浪漫倶楽部の部員六名+数人のみです。

『いびつ』は、というと、登場人物総数はかなり多くなっていますが、孤独な主人公二人は、そのほかの人たちと薄いつながりしか持っていないので、二人だけの閉じた物語だという印象が強いです。

そのおかげでしょうか、主役の柿口啓吾のキャラクターは普通の物語の数倍分のキャラクター情報が凝縮されているようであり、

これは、他の脇キャラを排除していくことで描き分けの必要がなってはじめて可能になったことなのでしょう。

そして、この多様性は、ある意味リアルな人間像に近いように思われます。

 

『いびつ』はギャグマンガでもあるので、主役の柿口さんはゆるく描かれることが多い。

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シリアスな状況になると、こうなる。

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ヒロインの恋の対象でもあるので、時たま美形風にも描かれる。

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ただ、冷静に考えると、ダメな要素の掃きだめキャラですから、客観的に見たならこんくらいキモいかもしれません。

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『すんドめ』では早華胡桃がゆるキャラ化することが多かったのですが、『いびつ』で森高円がゆるキャラ化することはほぼなく、その代わり柿口さんがしょっちゅうゆるキャラ化する。

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ゆるキャラって、基本的にはかわいいものですから、

柿口さんはかわいいということになります。そして『いびつ』においては森高円のほうはとらえどころのない存在で、キャラとしての魅力を本当に放っているのは、柿口啓吾らしいということに、しばらくしてから気が付きました。

 

 

胡桃のゆるキャラ化したときの魅力を引き継いでいるだけでなく、柿口啓吾にはそれまでの岡田作品群のキャラの要素が高濃度で凝縮されています。

 

柿口さんがギャグ風の時には目は、点か線。

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それに対し、シリアス風な時は、ぱっちりした目。

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これは、『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』のヒーロー主人公の、変身前と変身後。

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主人公は開いてるのか開いてないのかわからないくらい目が細いという設定ですが、

 

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カエル化すると、カエルのようなくりくり眼で、イケメン化します。

 

ちなみに『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』の主人公は32歳。

柿口啓吾は22~23歳。柿口さんのどこか落ち着いた達観したところは、作者の分身であるというのもありましょうけど、『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』の32歳の心を引き継いでいるようでもありますし、

『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』の高校一年生のシゲの少年ぽさも持っており、

要は、前の作品で二人に分けられていたキャラが一人の枠の中に凝縮されているってことなのでしょう。

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老成した部分もあり、初々しい少年ぽさもありというのが主人公・柿口啓吾のキャラであり、

 

なおかつ

岡田和人の最初の長編『教科書にないッ!』のネタキャラ群を集大成して、かれらの人生の肯定的な部分に光を当てようとした試みのようにも見えるのです。

 

8巻に出てきた東堂君。

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親から金の形でしか愛情をもらったことがないので、自分も金で愛情を示せると思ってる。

外見が、非常に柿口さんっぽい。

『いびつ』でいうと、円の母親が金で問題を解決しようとするところが同じ。そして彼の周りに集まる人たちは、自分の居場所がないと感じているところも『いびつ』の円の問題に通じる。

 

途中から出てくるネタキャラ。

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九州 広島 大阪と転校繰り返し主人公の学校にたどり着く。口から出る言葉と心の中身が全然かみ合わない。低身長、喧嘩弱いけど、「女子供には負けねぇんだ」

 

終わりの方に少しだけ出てくるキャラ。

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受験ストレスで、自己コントロール能力消失。

髪型、輪郭が柿口さんぽい。

 

ちなみに、岡田和人の自画像。

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上にあげたキャラとかなり共通しており、これらネタキャラに親近感を抱いているらしいことが分かる。そして、柿口啓吾がその集大成であるのではなかろうか?

 

柿口さんが、時折見せる特撮戦隊的なポーズ。

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喧嘩の経験のないおたくが相手を暴力的に威嚇しようとすると、特撮戦隊的なポーズしか出てこないという意味だと思う。

 

そして、これの源流はというと、『教科書にないッ!』のオメクリマンだと思う。

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それから、ギャグ時の表情の作り方としては、『すんドめ』の元部長の流れを引いているっぽい。

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そして、わたしが、最初に読んだ時に感じたのは、

柿口啓吾 = ガンダムアムロ

髪型似てるってのもそうですけど、よくよく調べたら、いろいろな点でやっぱり似てると思われます。

それに、台詞にガンダムっぽいのがいくつかありますし。

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それに調べてみると、『すんドめ』の部室にガンプラいくつも飾ってありますので、作者はおそらくガンダムファンだと思われます。

 

 

このように見てきますと、『いびつ』の柿口さんって多様な面をもっており、岡田和人が最高と考えるものと最低と感じるものを片っ端から突っ込んでできた集大成的なキャラらしいです。

 

そして、『ほっぷすてっぷじゃんぷッ!』に対する批判ですが、男の立場からしても共感できないネタキャラの勃起場面というのは見ていてそれなりに不快なものですが、柿口さんくらいによく作りこまれ共感できるキャラだと、勃起の場面に不快感を、少なくとも私に関しては、まったく感じません。

『いびつ』の成功原因ってこの辺にあるのではないでしょうか?

 

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ギャグ調、ネタ調、ゆるキャラ調の時とシリアスな時の画の振り幅の大きい柿口さんですが、実のところは、おそらくこんな顔しているらしいです。

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ファミレスのトイレの便器の中に鍵を落とした時。その鍵の位置から二人の顔を見上げる構図。誰目線なのかというと、人ではない物質からの目線ですから感情を介さない客観的なものと考えられます。

円が人形だという以上に、柿口さんが人形っぽいですね。

そして、二人そろって顔面アップで一コマの中にシリアス風に描かれたコマって『いびつ』のなかに何枚あったんでしょう?この他にあったっけ?

 

 

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