ドラキュラの出そうな場所  ハロウィーンを待ちながら

子供のころ、吸血鬼を恐れるあまり十字架がほしいなと思ったんですが、

キリスト教のグッズを売っているような店も近所になかったので、仕方なく祭りの縁日で100円で売ってるようなインチキなペンダントを手に入れた、

 

そして、十字架持っててもキリスト教信じていないと吸血鬼除けには効き目がないと知ると、キリスト教徒になりたくなった、

 

そういう経験持ってる人はかなりいると思います。

 

長じるにつれてドラキュラってだんだん怖くなくなるのですね。

だってどう考えても日本の風土になじまないですから。

それと比べると、口裂け女とかの方が遥かに怖いです。

 

ヨーロッパにはヨーロッパの文化があって、其のはざまで陽を避けるようにこっそり生きているのがヨーロッパの怪物たち。

そして日本には日本の文化と都合があり、其のはざまの形も日本独特だったりします。

 

葬式やるなら仏教で死体は棺桶ごと火葬しちゃうってのもありますし、

それにドラキュラが日本を訪れたとして、ドラキュラって何語話すんでしょう?

ルーマニア語とか英語しかできないのでしたら、いろいろ苦労されるんではないでしょうか?それだと得意の催眠術も効き目薄ですよね。

 

その反対に、お岩さんがベルリンとかに出没しても苦労するだろうなという気がします。「一枚二枚…」とか言っても言葉通じないとあんまり怖くないでしょうし。

 

つまりドラキュラって日本にいちゃダメっぽいですから、私たちは日本にいる限りはドラキュラを恐れる必要はないということになります。

ま、それいうならブラム・ストーカー原作の『ドラキュラ』自体、科学発展した19世紀のイギリスにそんな迷信じみたもんいていいんですか?という問いに答えるかの如く、わざわざルーマニアの辺境まで赴いて、吸血鬼をロンドンに連れてくるわけでして、

 

なかなか吸血鬼がいていい場所というのも世界では限られたもののようです。

ドラキュラの城の所在はヨーロッパの辺境で、トルコの勢力下でもあり、

キリスト教徒の混在する地域で、それゆえ小説『ドラキュラ』の中には

「世界のあらゆる迷信はカルパチア山脈に行きつく」という一文があります。

 

先進国には吸血鬼なんかいないけどルーマニアみたいなクソ田舎にはいるかもしれない、少なくともあそこの時代遅れの住民たちはそういうものを信じている。

 

では、『ドラキュラ』を何度も映画化したアメリカ人にとってドラキュラとはアメリカ国内に出没していいものなのでしょうか?

 

『ドラキュラ』はロンドンを舞台とした物語りなので、その映画化の場合も舞台はロンドンとなるのが常ですが、

変化球気味の吸血鬼映画ですと、アメリカを舞台とすることになります。

それも宇宙ウィルスが感染したゾンビみたいな最近はやりの吸血鬼ものではなく、かなり古典的なスタイルのヴァンパイアものの場合どうなるかということですが、

 


Salem's Lot ( 1979 ) Trailer - YouTube

スティーブン・キング原作 トビー・フーパー監督作品。

アメリカ東海岸マサシューセッツ州の田舎町が吸血鬼により全滅。

その吸血鬼、『ノスフェラトゥ』と同じスキンヘッドです。

そして、このような古典的な吸血鬼ですと、やはりいちいちヨーロッパから遠路はるばる船に乗ってやってくることになります。

その移動を手助けするのは、骨とう品屋の親父でイギリス人。

 

イギリス人の視点からすると、ドラキュラってイギリスにはいなくてルーマニアから連れてこないといけないのですが、

アメリカ人の視点からすると、ヨーロッパは古い建物や因習いっぱいあるから吸血鬼の一人や二人くらいいるだろう、

そういうことなのでしょう。

 


インタビューウィズヴァンパイア Interview with the Vampire TRAILER - YouTube

 

アメリカ人にとっては何もわざわざルーマニアまで行かずとも、ヨーロッパにならいたるところに吸血鬼が住んでいるらしいということで、

こちらの映画ですと、フランスの植民地であった南部のニューオリンズにヨーロッパ由来の吸血鬼が住んでいて、好き放題やっているという設定でした。

 

アメリカ人にとって古典的な吸血鬼は、ヨーロッパからはるばるやって来るものであり、

いきなりカンザスの新興住宅地に出没するとか、西部劇の町に出没するというのはリアリティが薄いのでしょう。

 


でもそういう映画もあることはあります。

 

ドラキュラが美女を襲い血を吸う、美女は恍惚とした表情を浮かべる、

それら描写に100年前の性欲抑圧された社会の隠れた欲望を見ることはたやすいですが、現代ですと性的に抑圧された人たちを映画に描くとするとオタクかカルト宗教信者にならざるを得ません。

そして、オタクを主人公にすると、今どきホラー映画ばかり見ている少年なんて女にもてそうもないですから、設定上都合がいいのですが、

でも、こういう映画は見る人を選んでしまいます。

 


1985 Fright Night Trailer - YouTube

 

主人公がドラキュラ退治を頼む相手が大学教授ではなく、テレビで怪奇番組のパーソナリティをやっている一俳優だったりします。

その名はピーター・ヴィンセント。怪奇三大俳優の内のピーター・カッシングヴィンセント・プライスの名前をくっつけたもので、演じるのは『猿の惑星』の科学者だったロディ・マクドウェル。

まぁ、オタ泣かせな設定でした。

 

 

では、ドラキュラ的な古典的吸血鬼って日本にいていいのか?というと、

あることはあるんですね。

www.youtube.com

田舎の大きな洋館に外国の出自を持つ一族がひっそりと暮らしているという設定。

なんか隠れキリシタンの生活の合わせ絵のような設定です。

そして隠れキリシタン同様に、古典的な吸血鬼は日本では暮らしにくいのだろうと思われます。