監督の行定勲、みうらじゅんと似た風貌の持ち主ですが、かつて岩井俊二の助監督をしていたことがあるらしく、
そういえば、塀の上だけ歩いて行けるところまで行ってみよう、という岩井俊二監督作『ピクニック』がありましたが、
『GO』でも柴崎コウが道路の中央線の上だけを歩いて国会議事堂から家までたどり着くというアスペルガー的なシーンがあります。
ここで大友良英の曲がBGMで流れるのですが、これが『あまちゃん』のワルツとほとんど同じ感じの曲調。
勉さんが朝鮮学校の教師役で出演しており、
窪塚を理不尽に殴る。そういえば『あまちゃん』でもミズタクを殴っておりました。
こんなところばかり注意してると、『あまちゃん』に窪塚洋介が出演しているような錯覚を受けてしまいます。
一方 『ピンポン』で窪塚と共演した井浦新主演の『かぞくのくに』
なかなかどんな話なのかがつかめませんでした。
北朝鮮に渡った兄が25年ぶりに日本に一時帰国…、
そしたら、井浦新、何歳だよ?なんでお父さんもお母さんも日本にいるのに、お兄さんだけ北朝鮮??
お父さんが北朝鮮シンパで、近い将来、北による半島統一がなされると信じ、1970年に16歳の息子だけを北朝鮮に帰国させた、というのが物語の土台で、
その結果の悲劇が映画のストーリーなのですが、
DVDみながら監督のインタビューとかをネット上で漁って初めて理解できました。
分かりにくく そして、一度分かってしまうと、なんちゅうひどい話なんだろう、と唖然とせざるを得ませんでした。
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ただ、井浦新が35歳以上の役を演じているというのは、なかなかいまだにぴんと来ません。
日本在住の北朝鮮籍の人は、世界史的にも非常に特異な難民という事が分かり、愕然とさせられるのですが、
現在進行形の社会問題であるだけに、甘っちょろいオチとか生半可な物語進行がなかなか入り込む余地がありません。
そんな中でも、海外旅行用のトランクのエピソードが、
映画は、スウィートな希望がないと成り立たないはずのものとでも言わんばかりに差し込まれています。
このトランクの挿話を映画のメッセージとするなら、『GO』と『かぞくのくに』は同じこと言っている映画という事になるのでしょうが、
映画におけるメッセージって、そこまで重視すべきものなのか?単に作者が画面に端っこに書き込んだサインのようなものではないか? 私にはそんな気がします。
監督の実体験を基にした映画で、現実の社会問題を扱っているだけに、適当な絵空事言って明るく映画しめることが出来ないという点では、『GO』とは全然違います。
現実を扱った映画に説得力を与えるべく、細部も丁寧に作りこまれていて、たとえば、
大森南朋・兄が演じる北朝鮮の監視役ですが、
日本滞在中は、組織の見張りがつくし、日本の公安からも尾行される、と警告する場面。
明らかに年上の人を前に悠然と煙草をふかし、上から目線なしゃべり方。
そんで、喋る内容も結構怖い。
これに合わせて、不安をあおるようなピアノのBGMが入りますが、
コーヒーに、砂糖ドバドバ入れて、濃縮ミルクをガバガバ流し込む。
それを見た妹が、「北朝鮮には砂糖も乳製品も不足してる。強がったふりしてるけどこういうところでボロ出ちゃうよね」と笑うシーン。
北の人の外面と内面の乖離、そして北の怖さを読みそこなった主人公の妹の心理が、わずかな時間の中で極めて効率的に描かれてます。