黒澤作品のワーストについて考える  第一回 

監督だれそれのワースト作品を選ぶこと。正直それほど簡単なことではありません。

 

普通の監督作品でしたら、真にワーストな作品の場合DVD化されない場合もありますし、第一、そんなワースト作品を無理して見たい人もなかなかいないです。

んなわけで、ネットで黒沢作品のワーストは何か?について調べてみようにも、なかなかいい意見に巡り合うこともありません。

 

以下は黒澤作品の一覧表ですが、計三十作品。

 

1943年 姿三四郎

1944年 一番美しく

1945年 続姿三四郎・虎の尾を踏む男達

1946年 我が青春に悔いなし

1947年 素晴らしき日曜日

1948年 酔いどれ天使

1949年 静かなる決闘・野良犬

1950年 醜聞羅生門

1951年 白痴

1952年 生きる

1954年 七人の侍

1955年 生きものの記録

1957年 蜘蛛の巣城・どん底

1958年 隠し砦の三悪

1960年 悪い奴ほどよく眠る

1961年 用心棒

1962年 椿三十郎

1963年 天国と地獄

1965年 赤ひげ

1970年 どですかでん

1975年 デルス・ウザーラ

1980年 影武者

1985年 乱

1990年 夢

1991年 八月の狂詩曲

1993年 まあだだよ

 

 

私、実のところ、黒澤明が一番好きな映画監督なのですが、つい先ほど全作品見終わったばかりなんですね。

その他の監督で言いますと、はるかに監督作の少ない宮崎駿でさえ『パンダこパンダ』とか見てないですし。コッポラも見てないのかなりあります。

 

どの監督にも失敗作や地雷作があるもんです。

デビュー作でファンになって、次回作の公開を楽しみに待ちわびていた、というリアルタイム追っかけの場合以外の、

DVDや名画座での後追いファンの場合ですとかならずどっかで地雷作品を踏みつけてしまい、それに懲りて、評判の低い作品や話題に上らない作品は避けてしまうことになります、普通は。

 

つまり監督誰それのワースト作品を選ぼうにも、ワーストになりそうな作品は見られることも語られることもないわけでして、

黒澤明のワースト作品は何か?」とネットで検索しても、ろくな意見に出会えないのもむべなるかな、であります。

 逆からいうと、そんな話題がなりたつというだけで、どれほど優秀な映画監督であるかという証明になるわけです。

 

で、ワーストは何かについて考える前に、黒澤明作品であまり見られることのない作品を私が適当に選んでみますと、

以下のような感じでしょうか。

 

 

1944年 一番美しく

1945年 続姿三四郎・虎の尾を踏む男達

1946年 我が青春に悔いなし

1947年 素晴らしき日曜日

1949年 静かなる決闘・野良犬

1950年 醜聞

1951年 白痴

1955年 生きものの記録

1957年 どん底

1970年 どですかでん

 

まあ、異論のある方もいらっしゃるでしょう、異論は無論認めます。まあ、認めますけれど、

個人的な好き嫌い、作品のクオリティーへの評価を別として、

あまり人の話題になることのない作品という尺度で言うなら、多くても2~3本入れ替わる程度でしょう?

そしておそらく、これらの中に黒澤のワースト作品が埋もれている感じがいたします。

ネットで検索しますと、晩年の作品 『夢』『八月の狂詩曲』『まあだだよ』がワーストとして挙げる人がほとんどですが、

これら作品は、よく見られており人々の話題に上がることが多い、ということなのでしょう。

カラー作品ですし、音声もクリアですし、その点に関しては見やすく楽しみやすい作品と言えるでしょう。基本的に、観客はみんな、色彩が好きですし、リアルな音も好きですから。

そして、大抵のところ、「黒澤は劣化した」とか「全盛期の面影もない」とかそういうクサされ方でして、

本当のところ、そういうクサし方をしている人たちにしたところで、黒澤作品であるということをあっちに置いておくとするなら、普通に愛すべき映画たちということなのではないでしょうか?

 

 

 

 

おそらく本当のワースト作品は、人々の話題に上がることのない作品群にあるはずなのですが、 

とりあえず、どの作品からとりあげてみませうか、

『一番美しく』と『我が青春に悔いなし』についてはいろいろ思うところがあります。

(次回に続く)