最初の4話までは、 東京←→北三陸 の方向軸を画面が持っていたのですが、
それ以降はどうなってしまうのか?ということです。
海女になるとか、12話で北三陸に住むことに決ったり、そのあとユイちゃんと一緒に東京へ家出したりするのですが、
13話以降は、別の監督との分業になるので、統一的な画面の在り方が難しくなってきます。
そうなると、
各セットの入り口がどちら側にあるかで、人物を左右のどちら側に配置するかが一番のポイントになるようです。
いわば、伝統的な日本演劇の上手と下手が踏襲されたセットです。
外側 内側
この方向が基本のセットでは、登場人物が感情をさらけ出し、声を荒げ、そして人間関係を修復する場所です。
つまり、人間の心の比喩としての部屋としてのセットです。
それに対し、
観光協会
窓側 入口
足立家
マントルピース 入口
伝統的な日本演劇の上手と下手が左右反転したセットです。
内側 外側
この配置が基本のセットでは、人間関係の複雑なドラマはほとんど起きません。何かが起こるとしても、入口に近い方で起こる確率が高いです。
そういえば、足立家の居間での悶着は、入口のドアのところです。
そして、
ユイちゃんの部屋は 足立家の居間とは逆であり、
これは、ユイちゃんが足立家の中では異質な存在であることを示しているようです。
また、
ユイちゃんは、ある意味、若かった時の春子さんですから、二人の同一性を示すように、同じ向きですし、どちらの部屋もピンク主体の色彩です。
そしてもう一つ。
セットではありませんが袖ヶ浜のウニ漁場。
夏ばっぱの第一の職場であり、夏ばっぱの家と同じ方向性があるようです。
だから、海にお祈りするときは、家でのお祈りと同じ →方向。
東京←→北三陸 の二項対立で 画面の左右の構図ができていたのが1〜4話ですが、
その対立が消滅した後、
このように各セットごとに、画面上の上手と下手を決定しておくことで、画面になんとなくの左右の傾向ができてきます。
その場において物語を進める人物は、← 向きである確率が高くなりますし、
そうでない場合は、何か不都合なことが物語におこっている確率が高くなります。
『あまちゃん』では、登場人物が一つの画面に10人くらい映る場合が多いのですが、
脇役であっても物語の中に居場所を持ち、語るべき何かを持っているのが『あまちゃん』の世界であり、
主要人物のアップばかりで物語を進めるやり方をあまり採りません。
そんな演出法ですから、多くのわき役に交じって一般人が画面に紛れ込んできても、ちゃんと受け入れるだけの度量があるのですね。