「レッドレターズ」 

谷村美月、05年に「カナリア」という作品で、役者として再デビューする。
役者としてのデビューそのものは、02年の「まんてん

90年6月生まれだから、「まんてん」でデビューした時は、12歳。小学校六年生。

その後、普通はNHKの朝の連ドラにそこそこの役で出たなら、いろいろ役がつきそうなものなのだけれど、ぜんぜんオーディションに受からなかったらしい。

あれ、芸能事務所に所属していなかったのか?個人でオーディション回っていたのか?

そんなこんながしばらく続くと、本人、もう芸能活動に見切りをつけようかと思っていた矢先に、「カナリア」で主役をゲット。

公開が05年ですから、演じていたときが、14歳で、中学2年生。

中二病と俗に言われる年齢なのですが、演じた役も実に中二病的。

母親が死んで、父親から家庭内暴力を振るわれて、おそらく学校にも居場所がなくて、小遣い稼ぎに援交ばかりやってるという、おそろしくスレた役。

親の立場、特に男親の立場としたら、いくら主役とはいえ、自分の愛娘に援交中二の役演じてほしくないな、と思うのが普通とは自分は思うんですが、

谷村美月、中二で、そういう難しい役を、見事に演じてしまいまして、すっかり芸能界に自分の居場所を作る事に成功してしまいます。

まあ、難しいところと言えば、
援交中学生もしくは映画の設定からだと、小学生かもしれんのですが、そういう、有る意味スキャンダラスな役を演じて、成功すると、

以後の役のオファーというのは、同系列のものに著しく傾いてしまうものです。

彼女の、生真面目な仕事振りと、演技をしていないテレビ出演時の様子から考えて、

自堕落で不道徳な子供の役とか、肉体的精神的に虐待を加えられる役とか、世の中の暗黒面に接触する役とか、

そういう仕事ばかりやっていて、何か変なんじゃないか?と思わずにはいられないのですが、

にもかかわらず、彼女は、そういう仕事でも、コンビニのレジ打ちが客の列を整然とさばいていくように、次々と何にもなかったようにこなしていく。

一体何なんだろう?この女の子は?とずっと思いながら、自分は彼女の出演している作品を次から次へと見てきました。


ほんと、大人のよこしまな妄想をどっぷりと頭のてっぺんからぶっ掛けられているのに、
ほとんど動じていない、少なくとも自分にはそういう風に見える、これは、演技が上手いとかどうこう言う前に、まずすごい事だな、たいした女の子だ、と思わずにはいられない。

「レッドレター」06年公開。
多分、谷村美月15歳。

谷村美月カナリアに出た時が14歳。
ちなみにジョディ・フォスターが「タクシードライバー」で売春婦の役を演じたのが13歳?
フェラチオやろうとして、デニーロのズボンに手をかける演技、そういうことローティーンの女の子に、演じさせていいものだろうか?と見ていて思ったりするのですが、
「タクシードライバー」、ジョディ・フォスターの演じた女の子が仮に実在するとして、最後の銃撃シーンを目の辺りにすることは、売春経験する事よりもPTSD度合いが強いだろうな、と自分は考えます。
カナリア」の谷村美月、性的な方面では十分に暗黒面にさらされてはいますが、過激な暴力にはさらされていません。

それで、「タクシードライバー」のラストの殺戮シーンを別個に谷村美月に演じさせてみよう、という変な企画の映画が「レッドレターズ」
正直、見られるレベルに達していない。谷村美月の出番まで倍速、4倍速、8倍速と進む。

筧利夫の娘役で、目の前で父親が撃ち殺される。その様子を強制的に見せられる谷村美月は猿轡をさせられ、涙を流す。

こうやって、2行にまとめてしまうと、どこまで鬼畜で変態な映画だ!と期待してしまうのだが、
映画そのものは、全く面白くない。

筧利夫は自分、けっこうお気に入りの俳優なのだが、そんでも、面白くない。

「タクシードライバー」のラストでのジョディ・フォスターの精神的苦痛を谷村美月にも味あわせてみたい。
私にとっては、それだけの企画に見えるのですね。


ほんと、自分も含めて、大人の男ってのは、ろくでもない。
そういうろくでもない大人の妄想をあっさりと裁いてくれる谷村美月の十代の活躍は、実に稀有なものでした。